2019年の仮想通貨・ブロックチェーン領域と今後の課題について。投資、規制・法律、ビジネス、技術はどう動いてきたか?

みなさん大変ご無沙汰しております。megan(Twitter:@akiet97)です。

2019年がもう終わろうとしています。読者やいつもお世話になっている皆さん、今年もありがとうございました!

昨年度に引き続き、今年の一年の仮想通貨・ブロックチェーン領域の状況を振り返ってみたいと思います。

※2018年の仮想通貨・ブロックチェーン領域の振り返りについては以下の関連記事をご覧ください。

2018年の仮想通貨・ブロックチェーン領域と今後の課題について。投資、規制・法律、ビジネス、技術はどう動いてきたか?

【投資】通貨価格の乱高下。プレイヤーの入れ替わりが続く

2019年は価格の乱高下が続き、投資家は振り回されることの多い1年だったかと思います。

2018/12/31の段階では1BTC=40万円ほどでしたが、そこを底値としつつ、2019年は価格の乱高下が続きました。4月には突如50万を突破、6月と7月には100万を越すなど、一時的とはいえ活気のある市場となりました。その後緩やかに価格は低下していき、2019/12/31現在は1BTC=78万ドルで落ち着いていますが、昨年の同日と比較すると約2倍の価格になっています。

価格の乱高下の中で一部の個人投資家が国内外で引退する一方、Bakkt開始などで機関投資家の参入もあり、投資文脈でのプレイヤーの入れ替わりが激しい1年となりました。

他の通貨もビットコインの価格に引っ張られる形で乱高下を繰り返しましたが、出来高の多いコイン、例えばBNBなどのユーティリティトークンや、取引所の「お墨付き」の優良プロジェクトだけを販売するIEO(Initial Exchange Offering)の対象となったトークンの価格は高騰しており、そうでないコインとの差が2018年よりも一層はっきりしたのではないかと思います。

【規制】規制強化の流れが続く中、規制に準じたビジネスへの取り組みも。

各国当局による仮想通貨規制に関しても、2018年同様に厳格なものとなりました。

世界的な傾向としては以下の通りだったかと思います。

  1. ICOに関しては米国をはじめとして事実上有価証券と同等の規制を適用した立法やガイドラインが多く、通説になりつつある。
  2. AML/CFTの観点から、仮想通貨事業者に対してこれらに対する対策およびKYCを義務付ける趣旨の立法を行う国が多く、FATFも同スタンスである。一方で規制が不十分でありマネーロンダリングの温床になっている国・地域も未だ存在する(減少傾向にはある)。
  3. 顧客(/投資家)保護の観点から、預かり資産規定をはじめとするハッキング対策に関してもガイドライン等で公表する国が増加した。

概ね2018年同様かと思いますが、2017~2018年に規制の議論をしていた国が、準備を整え、今年に入って一気に立法を進めてきた印象を受けました。

※規制当局による仮想通貨禁止の背景に関しては、以下の記事で詳細に解説しているので、もしよければお読みください。

なぜ規制当局は仮想通貨を規制しなければならないのか

 

日本国内で言えば、去年(2018年)まではFATFの対日審査を控えていたこともあり、金融庁は仮想通貨および仮想通貨事業者に対し厳しい姿勢を取らざるを得ませんでした。結果として2018年までの事業者にとっては、自社のビジネスについて規制との関係を調査・ネゴシエーションする必要があり、これを負担に感じることが多かったかと思います。

一方で今年は、ビジネスの規制との関係を考慮せねばならない点に変化はないものの、StellarのCoincheckへの上場や、経産省主催のハッカソン開催にも見られるように、むやみな規制でイノベーションの萌芽を摘むのではなく省庁の垣根を超えて「イノベーションを妨げない適切な規制」を試行錯誤していた痕跡が伺えました(もっとも、Stellar上場発表直後にトークンバーンが発表されたりと、その上場審査に疑問がないわけではないですが)。

実際に昨年度までは、トークンを発行しないブロックチェーンプロジェクトに関してすら規制の対象として見られていたことを鑑みれば、「アセットクラスとしての仮想通貨に対する規制のありようは考える一方で、技術としての仮想通貨・ブロックチェーンに対してはイノベーションを促進するような規制のありようを考える」という今の流れは事業者にとっては好ましいでしょう。

個人的にはレギュラトリー・サンドボックスが今以上にさらに活用されると良いなと思っています。

【技術・ビジネス】Libra・CBDCの発行、アルトコインの苦戦。

規制が整備され、市場も成熟する中で、今年ブロックチェーンとして注目を浴びた技術に関していくつか順番に見ていきたいと思います。

Libra

Facebook主導で発行される「Libra」か仮想通貨・ブロックチェーンの業界を今年最も騒がせたトピックであることに異論は無いでしょう。

LibraはFacebookが(厳密には子会社のCalibraが)主導して開発するプロジェクトであり、発表直後から、当局によりG20や米国公聴会等を通して規制していくことが強く主張される事態となりました。テックジャイアントが発行する通貨の与えるインパクトを物語っていると言えます。

Libraの技術的な仕様・参加企業に関しては以下の関連記事をお読みください。

【最新解説】Facebookが発表した仮想通貨「Libra」について、性能や参加企業まとめ。

 

CBDC(Central Bank Digital Currency)

Libraとほぼ同時期にアナウンスされ、同様にインパクトを与えたのが中国政府によるデジタル通貨CBDC(Central Bank Digital Currency)の発行です。

どの国家にとっても長らく議論の俎上には載っていたものの、技術面での課題を克服し、実際の利用に向けて政府主導で進められているのは本ケースが初となります。

※日本においては、日銀によるデジタル通貨発行はビットコインの発明以前から研究されていました。中島先生の『アフター・ビットコイン』に詳しいです。

2020/1/1より、暗号法を施行することがすでに発表されており、デジタル人民元発行に向けた法整備が着々と進んでいると言えます。

テックジャイアントによる通貨発行である「Libra」と国家によるデジタル通貨発行である「CBDC」は、与える影響の大きさ、広さから、来年以降も業界を賑わせるホットトピックとなるでしょう。

パブリック型ブロックチェーン

イーサリアムは11月にEthereum2.0へ移行したものの、未だスケーラビリティの解決策を示すにいたっておらず、「壮大な社会実験」の域を抜けられていない状況です。Lightning Networkが実装されたことでマイクロペイメントが可能になるなど、成熟したコミュニティに支えられて着実な開発が進められてきたビットコインとは対照的でした。他のアルトコイン、特に中国系の仮想通貨(EOS,TRON等)はガバナンスの問題や開発者の離脱、市場の冷え込み等から、今年一年で期待されるロードマップを達成したとは言い難い状況が続いたものと思います。

しかしアプリケーションを作成する上では重要な基盤として認識され、DefiやSTO規格などが多数開発されてきました。

個人的にはこれらの通貨は、今後はアトミックスワップによりアセットの交換が可能な「COSMOS」・パブリック・プライベートチェーン双方のデータやアセットを接続できるハブとしての「Polkadot」といったインターオペラビリティ技術に接続する1チェーンという位置付けになっていくものと思われます。

新しい金融の概念ーDefi(Decentralized Finance)とSTO(Security Toke Offering)

今年パブリックチェーンに関しては、イーサリアムをベースとした金融文脈での活用が広く検討されてきました。 Defiと呼ばれる分散型金融サービス群としてはイーサリアム他トークンの貸し借りを行う「Compound」、価格の需給が自動的に調整されることで常に価格を一定にすることに成功したステーブルコイン「MakerDAO」、またKyber Networkのようなある種のDEXなどが有名になりましたが、これらのように分散型のプラットフォームの上で動かすことで透明性を実現する仕組みは今後も広がっていくものと思います。

またSTOに関しても、国内ではSecuritizeやMUFGグループ等がプラットフォーム開発に乗り出すことを発表し、話題になりました。MUFGグループのバックアップをするのはLayerXであり、これらの事例を鑑みるに、STOプラットフォーム開発/デジタル証券発行などには、規制を遵守するコンプライアンス意識と高い技術力が求められるものと思います

※STOについてはこちらの記事で解説しているので、もしよければお読みください。

ブロックチェーンと「STO」の話。3分でセキュリティトークンの本質を理解する

【完全保存版】STO(セキュリティ・トークン・オファリング)を極めたい人がみるべきサイトまとめ。STOとは何か?ICOとの違いとは何か?

 

プライベート/コンソーシアム型ブロックチェーン

パブリックブロックチェーンにおいて、メインプレイヤーの苦戦や新しい概念・プロジェクトの登場が見られましたが、プライベート/コンソーシアム型、すなわちエンタープライズ向けのブロックチェーンに関してはPoCの事例・本番環境での導入事例が多く見られるようになりました。

利用されるチェーンとしては、幅広い用途に活用されてきたスタンダードな「Hyperledger系(その中でもHyperledger Fabric)」、第三者に取引を秘匿でき、プライバシー保護に優れていることから金融機関での人気がある「Corda」、J.P.Morgan主導で開発し、イーサリアムベースの「Quorum」の3強になってきたなという印象がありました。

本ブログはエンタープライズ型チェーンについてはあまり書いていないので、詳しくは国内で精力的にブロックチェーンコンサル事業を手がけているLayerXさんのニュースレターをお読みいただくのが良いかと思いますが、各国が導入事例を増やす中で、米中の大企業が毎月のようにリリースを出していること、また金融機関による導入事例が多いこと等が印象的な1年になったと思います。

来年以降の予測

以上のような2019年のトレンドをまとめると、仮想通貨の価格の乱高下により市場はしばしば混乱し、テックジャイアントや国家といったビッグプレイヤーによる通貨発行が検討されているなど世間を賑わすセンセーショナルなニュースはあったものの、当局による規制はイノベーションとの協調を重視する方針を鮮明にしつつあり、ビジネスサイドとしても全体的にこれを受け入れ、当局との調整を必要とする事業が多く見られるようになった。またパブリックブロックチェーンの活用にしろ、エンタープライズ向けのチェーンの活用にしろ、金融領域が主要なインダストリとして認識されつつある一方で、これらをシームレスに接続する技術も登場してきている、と言えます。

今後については動向を注視する必要があるとは思いますが、パブリックブロックチェーンに関して言えば、個人的には来年はインターオペラビリティにより様々なチェーンのデータが相互に運用できるようになれば、価値の流動性の向上に寄与するのではないかと思います。特にSubstrateは来年4月にテストネットを公開予定なので、それ以降さらに面白いプロジェクトが登場するのではないかと思っています。またエンタープライズ向けのサービスについてですが、多くの企業にとってはブロックチェーンはイノベーションとして認識されていることからも、今後も本番環境での導入事例自体は増加していくものと思います。一方でPoCと本番環境での運用は似て非なるものであり、導入を検討する企業にとっての「安定したシステムをまだ未成熟・不安定なブロックチェーンに永遠に代替することになる」心理的・物理的コストには留意した上で、導入を検討する必要があるかと思います。

 

というわけで、今年の1年間の業界とそれに対する自分の考えたことを、簡単にではありますがまとめました。もしこの記事を読んで、よかったと思ってくださった方々は下記のボタンからシェアしてくださるととても嬉しいです!

それではみなさん良いお年を!