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Twitterで話題になっているDefi銘柄の「Vega Protocol」。金融のデリバティブ商品をブロックチェーンプラットフォームで作成し、オリジナルのデリバティブ市場を創造できるのが魅力です。
前回記事の「Defi銘柄『Vega Protocol』。提供する分散型デリバティブプラットフォームのインパクトとは」では、Vega protocol と既存のデリバティブ市場や他Defi銘柄との相違点や解決する課題に関して解説しました。
今回はより具体的に、Vega protocol の設計思想や利用されている技術要素に関して解説していきたいと思います。
Vega Protocolで作成できる商品
前回記事でもご紹介したように、Vega Protocolの特徴は「誰でもデリバティブ商品を作成できること」でした。
では、作成できるデリバティブ商品にどのようなものがあるのでしょうか。
デリバティブ商品の考え方
そもそも金融商品におけるデリバティブ商品は、原資産×取引方法によってその商品性が決定します。
原資産(Underlying)とはデリバティブの対象となる資産のことを指します。有名なものとして株式、金利、債券などがありますが、他にも株式指数、信用リスク、現物も含まれます。
取引方法としては、一定の価格での将来取引を約束する「先物取引」、将来期日に一定の価格での売買権利行使が可能な「オプション取引」、金利や通貨などの性質の異なる支払い義務を交換する「スワップ取引」が代表的です。
これらを掛け合わせることで、多種多様なデリバティブ商品が現在の金融市場で流通しています。
Vega Protocolでは原資産・取引方法にかかわらず、これらのすべての商品を作成することが可能です。
Vega Protocolのマーケットに載せる商品の基準はトークンの保有者たちによって行われるガバナンス投票のみであり、可決されれば、商品をVegaのネットワークにデプロイすることができます。
ゆえに、決済データを入手できる原資産である限り、それが現物資産であっても、インデックス・バスケット、また、ブロックチェーン上にあるデジタルアセットであっても、商品を作成可能です。
個人的にはこの点でVega Protocolが他のDefi銘柄よりも柔軟性が高いように思います。
トレーダーにとってのユーザビリティ
コンセンサスアルゴリズム
多くのDefi銘柄がEthereumのメインネットやBinance Smart Chainのエコシステムの一員となる中で、Vega ProtocolではコンセンサスアルゴリズムにオリジナルのPoSを採用しています。
オリジナルのPoSを開発するに至った経緯は、CEOのVarney曰く「トレーダーにとってのユーザビリティの向上のため」。
一見するとユーザビリティとコンセンサスアルゴリズムは全く別の議論のようにも思えるのですが、そもそもトレーダーにとって、取引に参加するかどうかを判断する要因は①手数料②スプレッド③公正な取引環境④流動性と効率的にマッチングされた価格です。
①取引手数料が低いほうが良いことはいうまでもないでしょう。②も同様です。③は既存の金融市場であれば、日本でいえば金融庁、米国であればSECといった規制当局による厳しい規制があることからも、重要性が理解できると思います。
暗号資産に関しても同様で、「なぜ規制当局は仮想通貨を規制しなければならないのか」の記事でも述べたように、あらゆる金融市場において市場の公平性を担保することは規制当局にとっての重要なミッションであるといえます 。
Defiで最も問題となるのは④でしょう。一部のDefiプラットフォームを除き、多くのDefiプラットフォームにおいては流動性の低さが問題となっています。
これらの問題をVega ProtocolではPoSと下記の経済的インセンティブによって実現しています。
経済的インセンティブを付与するための設計思想と「流動性マイニング」
そもそも現行の証券取引所は、トレーダーとLiquidity Provider(LP)のマッチングのためのインフラの役割を果たしています。そのため、トレーダーとLPの両方はその利用にあたりFeeを支払う必要があります。
Liquidity Provider(LP)は金融市場に流動性を供給する役割を担う組織のことを指します。
例えば外国為替市場においては、銀行等がLPとなり、自己がリスクを負担して為替レートを提示することで、市場に流動性を供給しています。
Vega ProtocolにおけるLPは「流動性マイニング」への参加(ネットワークの参加者がLPに立候補することで、手数料収入やトークンによるインセンティブを獲得すること)が可能です。市場の活性化のために新たな商品を作成したり、流動性の供給を他のLPよりも早く行った場合には、より多くのVEGAトークンが与えられます。また手数料の入札を行うのもLPの役割です。
またVega Protocolにおいてはソフトウェアの利用料はゼロで、オープンソースです。ユーザーがVegaの利用にあたりFeeを支払わなければならないのは約定時のみであり、例えばプロダクトをVegaのネットワークにデプロイする・注文を出す、といったそれ以外のイベントにおいては、一切のFeeがかかりません。
加えてPoSの性質上、Vegaのチェーンを繋げるために不可欠となるValidatorが競い合うため、約定時に支払うFee自体も下がる想定となります。
結果、トレーダーの手数料の削減につながり、トレーダーにとっては他プラットフォームよりもVegaをデリバティブ商品の市場として選択するインセンティブが働きます。
Vega自体は分散化されているので、Vegaの取引で得られる手数料や収益を受け取る中央機関は存在せず、市場の創造・流動性の供給によって価値を生み出しているステークホルダー全員が手数料や収益からの利益を得ることが可能です。
ネイティブトークンVEGAの用途
Vega Protocolでは、ネイティブトークンとしてVega(ティッカー:$VEGA)を供給しています。最大供給量は64,999,723 $VEGAを予定しており、ガバナンストークンとして、下記のような用途を想定しています。
①PoSネットワークでのDelegate /Stakingのため
VEGAトークンのホルダーは誰でも自分のトークンをDelegateすることで、バリデータになることが可能です。そして、Stakingの収益を受け取る代わりに、獲得した取引手数料の一部をトークンホルダーへ分配します。
個人的にはどちらかというとDPoSにおけるバリデータの立ち位置に近いように思えます。
②ネットワークや商品の創造といったガバナンスのため。
トークンホルダーは、提案された商品(かつ、それが生み出す市場)やオラクルの仕様を確認して、それをVega上に作ってもよいかの投票をする権利を持っています。
またVega Protocolではノードのオペレータ(つまり、バリデータ)に支払う手数料の額や、市場の運営に不可欠である流動性のカバレッジレベルなどの調整の投票も実施されているのですが、それらの投票にもVegaトークンが利用されています。
加えてBitcoinやEthereumのような、新チェーンに導入すべき技術の決定や、アップグレードの時期・手法についての決定にも、トークンを利用するようです。
この点、VEGAトークンが他のDefi銘柄と差別化されている最も重要な点は、Vegaのプロトコルを使用して注文や取引を行うこと自体にはVEGAトークンは使用しない、ということです。
そこで取引するためのアセットのみが必要であって、ユーティリティトークンとしての利用方法はありません。ゆえに、VEGA自体に払うガス代などもなく、Defiを利用するのであれば必ずといってよいほど頭を悩ませることになるガス代高騰問題とも無縁です。
開発状況
2018年に開始した息の長いプロジェクトで、テストネットが2020年3月にすでに公開されています。
このテストネットはEthereumのRopstenに統合されたものですが、2021年の後半にはVegaのメインネットのα版をローンチ予定とのことです。
メインネットなので、実際のアセットクラスを用いた取引が可能です。バリデータのコミュニティによって運営されており、上記のような特徴を全て備えた分散化ネットワークが公開されることに期待ですね。
なおメインネットの公開のイベントとして、インセンティブ付きテストネットが公開されており、6月にトークンの配布、7月に制限付きメインネット(バリデータ、ステーク、ガバナンス等は正式版と同様だが、実際のアセットクラスを用いた取引はできない)が公開予定のようです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。個人的にはCEOによるAMAなども参加しましたが、個人的には良く作りこまれ、現在のDefiが抱える課題を解決しうるものになっていると思います。
Linkedinによれば、CEOのBarney Manneringsは北米最大手のSIerにて証券会社のシステム開発に携わっていたようで、他のメンバーにもブロックチェーンのリサーチャーやエンジニアのみならずトレーダーが参加しており、シナジーを生む体制にもなっているように思えました。
今後も個人的にはVegaの動向は注視していきたいと思います。
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