金融の基礎的な全体像を把握するー銀行、アンバンドリング業務(資金移動業、信託、貸金業)とは?

先日、ブロックチェーンのエンジニアをしている知人たちと有志で小規模な金融の勉強会を開催しました。中には外資系投資銀行等の金融機関で働いていたメンバーもおり、金融機関の業務の内情に関して喧々諤々の議論ができ、たいへん勉強になりました。

そこで今回は、勉強会で最も時間を割いた「経済の心臓」、すなわち銀行にフォーカスし、全体像をを簡単にまとめておきたいと思います。

銀行の3つの役割

銀行の業務は大きく、
  • 預金
  • 決済
  • 融資
3つに集約され、これらを通して銀行は「信用創造」をしています。

信用創造とは何か?

銀行が顧客からの預かり資産を貸し出すことで、世の中に流通する通貨の量を増やすことを指します。

例えばB銀行は顧客Aの預かり資産1000万のうち、支払準備金(預金者への払い戻しのために銀行が手元に残しておく資金。預金準備率によって計算する。今回は預金準備率を10%として計算)となる100万円以外の900万円を、Cに対して貸し付けた場合を想像してみます。

この場合CがDに900万円の支払いを実施し、Dが自身の取引先の銀行Eに預金した場合、この銀行Eはさらにこの預金の10%に当たる90万円を手元に残し、残りの900-90-810万円をFに貸し付けます。

このとき根源的預金が貸付と預金を繰り返すことで額面上のお金の額はどんどん増えていき、貨幣供給量は増加しています。

銀行はこの信用創造をすることができるため、貨幣供給量を増やすことができ、その結果として経済の安定に寄与しているということになります。

中央銀行(日本銀行)

「銀行の銀行」と言われる中央銀行(日本銀行)は通貨の発行の役割を担っています。日銀がお金を作ってそれを銀行に貸して、銀行から市中に回す、という信用創造でお金は増え、国の経済が回ります。市中に通貨を供給する銀行は、中央銀行と比較し、市中銀行と呼称されます。
ここで重要なのはマネタリーベース、すなわち「日銀が印刷したお金の量と実際に市場で流通しているお金の量が全然違う」という点です。日銀は間接的にしか金融をコントロールできないため、マイナス金利を含めた様々な政策によって経済政策を行うわけです。

 

さてこの銀行ですが、信用創造によって経済を回しているために、安易に銀行の業務を他の手段で潜脱したり、銀行が乱立してしまうことは一国の経済の崩壊を招きます。ゆえに各国当局は、厳しい規制(自己資本規制や預金保護)をもうけることで、安易に銀行業へは参入できないようにしているのです。

アンバンドリング業務

銀行の3つの業務(預金、決済、融資)をそれぞれアンバンドリングし、送金機能だけに限定しているのが資金移動業、預かり業務に限定しているのが信託業務(顧客の資産を預かって運用する)、そして融資に限定するのが貸金業務ということになります。
これらが揃うことは、銀行の3つの業務ができること、すなわち信用創造が可能になることを意味します。つまり、銀行業の規制を受けるのでなければ、銀行以外の事業者が資金移動業務、信託業務、貸金業務をまとめて実施することはできません。
とはいえ資金移動業は「お金を動かす」必要がありますので、そのために必要な範囲でなら少し預かってもよい、というのが法律上のロジックです。この点「カストディ業務」は本当は信託法に従わないといけない一方で、顧客の資産を預ける点で少々複雑な構造をしている、ということです。
今回は銀行とそれを取り巻くアンバンドリング業務について少しまとめました。今回の記事に当たっては以下の書籍を参考にしました。
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入門と書いてあったので手に取って読んでみたのですが、広範に金融について学べました。ただ銀行についてはページ少なめで、どちらかと言うと身近な投資やフィンテック(Fintech)、規制についての話が多めです。

続編として、金融規制に関して解説した初心者おすすめ記事を公開しましたので、よろしければぜひそちらもご覧ください。