前回の「ブロックチェーンを巡る中国とアメリカの特許戦争」記事で、アメリカと中国がブロックチェーン特許戦争を繰り広げていること、一方でオープンソースと特許の対立があること、そしてその事例について2つあげました。
今回はブロックチェーンと特許を巡る私自身の考えを書いていきたいと思います。
※本記事の執筆にあたっては、この本を参照しました。
ブロックチェーン以外のFintech関連技術についてもとても詳しく書いてあるので、興味のある方はぜひお手にとってみてください。
パテントトロール対策もかねて特許は取ろう
私は、個人的には各企業は基本的に特許は取るべきであると考えています。というのももし特許を取得しない場合、パテントトロールによる悪用の危機があり、その場合ますますブロックチェーンの発展が阻害されるからです。
パテントトロール(Patent trol)というのは、自分たちでは研究開発やプロダクトの製造・販売を行なっていないのに、他の人から特許を購入して、その特許権を行使する形で第三者からライセンス料や和解金を訴訟で得ることを目的とする団体のことを言います。日本ではあまり有名にはなっていませんが、アメリカをはじめとする海外ではかなりの額を訴訟で分捕っていて、このパテントトロールによって企業からすると予期せぬ訴訟のリスクを抱えて開発が不安定になってしまうんですよね。
だから個人的にはパテントトロール対策も兼ねて特許は取った方が良いと思います。めんどくさくても。
防衛的特許出願
もっともこの場合も、前回記事に書かれていたようなゴールドマン・サックスのような防衛的な特許出願にとどめておくべきでしょう。
というのも、ゴールドマン・サックスの前述したような特許はあくまでも他者の特許を防ぐための特許出願や、自分がその技術を使う権利を得るための特許出願としての性質を持つにすぎず、特許をとってもその技術を他人に使ってほしければ無償で特許を開放できるものです。それ以上の特許出願による特許戦争は本来のブロックチェーン技術の「誰でも開発できる、非中央集権的な技術」という趣旨を損ない、結果として発展を阻害する可能性があると思います。特にパブリックブロックチェーンなら。
Alice Caseとの抵触
また以上までの考察は基本的に特許とブロックチェーン技術の衝突に焦点を当てたものですが、特許出願時にもソフトウェアの一形態であるブロックチェーンにはAlice Caseとの解釈から大きなハードルに直面していると考えられます。
この判決ではほとんどの、あるいはすべてのソフトウェア特許は、特許保護の対象とならない抽象的なアイデアであると判断されました。具体的にこのAlice Caseとの衝突を回避するためには、特許出願者が明らかな発明者である旨の主張が認められなければならないのですが、ブロックチェーン技術はあくまでも匿名の「サトシ・ナカモト」なる人物により提唱されたビットコインに使用された一技術にすぎません。このジレンマをいかに回避し、特許を取得できるかどうかが企業にとってのイノベーションのカギであると考えられますので、個人的には今後の訴訟の形態を注視したいと考えています。
もっともこのように、中央集権的な仕組みである特許によってしかブロックチェーン技術の発展が現状守られていないこと自体が、中央集権を嫌い、完全な権力の分散を望むブロックチェーン開発者にとってはジレンマであるとも考えられるでしょう。
ブロックチェーンの特許に関しては現状この本が一番詳しいです。技術的な仕様に踏み込んで弁理士の先生が特許技術の解説をしてくれているので、ブロックチェーン特許に興味がある人にとっては必須の本だと思います。
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