岩村充教授が語った、ビットコインとハイエクの貨幣論

11月28日(水)に早稲田大学の小野梓記念講堂で仮想通貨に関するシンポジウムが開かれました。大きなホールが学生と一般の参加者で埋め尽くされ、とても有意義な話を聞けたシンポジウムだったのですが、私がその中でも特に面白いと思った岩村充・早稲田大学教授のお話について書いておきたいと思います。
岩村先生は東京大学を卒業後日本銀行に長く勤務し、経済学、貨幣学、暗号学に広く精通されており、ビットコインについてもかなり初期の段階から経済学・貨幣学的見地から鋭い指摘をされていました。その結果よく「あなたはサトシ・ナカモトですか?」と聞かれたのだとか。(岩村先生の考え方見てればサトシナカモトじゃないと思うんだけどな…)
ちなみにこの記事のアイキャッチは早稲田大学の公式HPからお借りしました。

ハイエクの貨幣発行自由化論

 

まず岩村先生が述べたのは、ビットコインは経済学者ハイエクの貨幣発行自由化論を体現するものであるという点。
ビットコイナーや経済に馴染みがある人でないとハイエクに馴染みがないかもしれませんが、ハイエクはイギリスの「鉄の女」ことマーガレット・サッチャー氏が熱烈な信仰者であったことで知られており、現在に到るまで経済学に多大な功績を残した偉大な経済学者です。彼は1970年に「貨幣発行を国家から外すべきだ」、すなわち中央銀行が貨幣発行を独占するのをやめるべきだ、という議論をしました。
ハイエクの議論に対し多くの経済学者は「そんなことをしたら経済政策が機能しなくなるじゃないか」という反論を行ったのですが、「では今その『経済政策』というのはどこまで機能しているのか?金融政策は本当に役立っているのか?」という岩村先生からのご指摘。ビットコイナーのみなさんにとってはごもっとも!と思う内容ですね。
この経済政策について、ハイエクは代表的な著作「隷属への道」の中でかなり早い段階から主張していました。隷属への道においてハイエクは経済政策は長期的には全く無駄であって短期的な雇用のためにあると主張しています。
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ビットコイナー御用達のハイエク。彼はリバタリアンとして貨幣発行自由化論を主張しましたが、彼の死後に出現した「Bitcoin」は彼の思想を具現化させた、国家以外が発行した貨幣であると言えます。

通貨の見合い資産は何か?

次に岩村先生が問いかけたのは、「円やドルは何を見合い資産として発行しているのか?」という点。
円やドルはもともと金造貨幣を見合いに発行していました。英米法圏においては米国が南北戦争の最中の1862年 legal tender actsに規定されています。今のベネズエラの法定通貨ペテロはlawful moneyと言っており、legal tenderであるとは言っていませんね。
ちなみに日本円については公式英訳はlegal tenderのようです。(岩村先生としては個人的にはlawful moneyが良いようですが)
そのような法定通貨に対して仮想通貨はどうでしょうか?
仮想通貨の見合い資産はあるのかないのか、あるとしたら何なのかについては諸説あるようですが、サトシ・ナカモトは仮想通貨の見合い資産は「ない」と考えているようです。岩村先生は今は見合い資産は別のものにあると思っているようですが。(この点ですでに岩村先生はサトシ・ナカモトでは無いな、という感じがしますよね)
ちなみに岩村先生が著書をシンポジウム内で紹介されていました。
ビットコイナーの方には馴染みがあるかもしれませんが、そうではない方でもぜひ貨幣としての仮想通貨の側面に注目して勉強したい場合はぜひ岩村先生の著書から入ることをお勧めします。仮想通貨と貨幣、というテーマについてだけでも何冊か書籍を出しているのですが、これが一番定番かな、と個人的には思います。