【書評】『バーチャルマネーの法務(第二版)』は仮想通貨の私法上の性質を体系的にまとめた良書。物権、債権、金銭と仮想通貨の関係は?

先日Twitterで赤羽みみずさん(@Mimizu_A )に『バーチャルマネーの法務』という本をAmazonの欲しいものリストからプレゼントしていただきました。赤羽みみずさん、ありがとうございました!

読んでみたところとてもピンポイントで私の卒論のテーマについて記述されていて有益でしたので、自分が読んでいて特徴的だと思った点についてまとめていきます。

 

仮想通貨の私法上の性質についての充実した記載

この本は出版が2018年11月に出版されただけあってかなり議論が新しいです。特に個人的に特徴的だと思ったのは仮想通貨の私法上の性質に踏み込んだ議論がなされている点です。

仮想通貨の議論というのは、規制の観点からどうしても公法上の議論に寄りがちです。特に仮想通貨の定義がされている資金決済法や金融商品取引法、出資法などといった金融規制の観点からの立法論が語られることが多いです。

これについては過去記事を参照ください。

なぜ規制当局は仮想通貨を規制しなければならないのか

しかし、マウントゴックス事件や2018年1月におきたコインチェック事件における仮想通貨の盗取(マウントゴックスにおいてはビットコインが、コインチェックからはNEMが盗まれた)において、真に自身の財産を失った仮想通貨保有者を保護するためには、公法上の議論のみでは足りず、一般債権者との区別の観点からも、私人間の法律関係を規定する私法上の救済がなされる必要があります

にも関わらず、私人間の法律関係を議論した文献は非常に少なく、一部の専門家による概観記事や論文があるのみであり、判例もなく、マウントゴックス事件で所有権返還請求の認容が問題となったにとどまっていました。

マウントゴックス事件は現在私法上の性質を語る上では唯一の裁判例であるため、まだお読みで無い方はこちらからどうぞ。

ビットコインの所有権を巡る「マウント・ゴックス事件」の事案・判決概要

この点につき、過去の議論を整理して充実した分量の記載があるのがこの『バーチャルマネーの法務』になります。

本著によれば仮想通貨、およびビットコインの私法上の性質については、

  1. モノ説
  2. 債権説
  3. 合意形成説

のいずれかの議論があると整理されています。

モノ説とは、その名の通り、物権にも類似した性質を認めます。ビットコインを動産類似の「モノ」と捉え、所有権類似の権利関係を観念します。モノ説のなかでもさらにビットコインの所有と占有を秘密鍵の有無によって分離するか否か、といった点で議論が細分化されるとしています。

債権説とは、ビットコインを取引所などの第三者に対する債権として構成するものです。例えば債権者が仮想通貨保有者、債務者が仮想通貨交換業者であるシーンなどを想定できるかと思います。

次に合意形成説ですが、これは仮想通貨が取引を行なう者の合意形成を前提する仕組みであることを前提にして、仮想通貨の取引ルールの法的な根拠をこのようなコンセンサスをソフトローとも言える合意形成に依拠しようとするものです。

詳細は本著でさらに記述されていますが、総じてこの本は

  • 法学部で民法などの私法を勉強している学生
  • 仮想通貨の私法上の性質について学習したい修士の学生や実務家の先生方

にとっては、かなり得るものが多いかなと思います。特に実務家が書いた実務向けの仮想通貨の法律書が多い中で、この本は基本的な仮想通貨の概念から学説まで丁寧に抑えてあるので、学生でも読めて良いかと思います。

もちろん基本的な仮想通貨についての説明、他のバーチャルマネーとの相違についても記述されており、例えば電子マネーやプリペイドカードとの違いは?適用される法律はどう違うのか?と言った点や、マウントゴックス事件を分析して信託法との関係についても論じられており、参考になります。もし興味のある方はぜひ。

 

今後もAmazonのほしい物リストからギフトを送ってくださった方の本については、書評を書いていきたいと思いますので、こちらから心優しい方のギフトお待ちしていますm(_ _)m