ビットコインの所有権を巡る「マウント・ゴックス事件」の事案・判決概要

ビットコインの民法上の性質について様々な学説が議論されているようですが、裁判例としては国内では現状マウント・ゴックス事件しか存在しないため、この事件の簡単な事案と判決の概要について備忘録もかねて書いておきます。
おヒマな方はどうぞ。

マウント・ゴックス事件(東京地方裁判所平成27年8月5日判決)

これは2014年にビットコインを含む仮想通貨全般の取引を行う取引所「Mt.Gox」がハッキング被害に遭い、失った資産の返還が不可能になり破産手続きを開始した件でビットコインホルダーが所有権に基づき破産法62条の取戻権を行使した事件です。

当時世界最大だった取引所Mt.Goxですが、ハッキングにより盗取された資産は当時のレートで約114億円に相当する75万BTCと顧客預かり金28億円相当でした。

同社は同年2月25日に約65億円分の負債を抱え、同年4月24日の破産手続決定を受けて破産管財人が選定されました。(一応民事再生手続もその前にしていたのですが、再生の見込みは無いとされたためです)

これが所謂Mt.Goxの破産で、当時の日経で大々的に取り上げられました。

当時のMt.Goxアカウントにはほぼ資力がなく数百BTCとわずかな法定通貨しか保有していませんでした。これについてMt.Goxにアカウントを保有していたユーザーが、当該ビットコインは自己が所有権を有するものであるとして破産法62条の取戻権を行使、当該ビットコインの全額の引き渡しを求めて訴訟を提起したものです。

 

東京地裁の判決は一言で言えばビットコインは所有権による保護の客体となる物ではないという判示でした。すなわち我々がビットコインをハッキングないしセルフゴックスによって失った場合、所有権に基づく返還請求を行うことはできないことになります。もっともこの場合であってもあくまでも所有権を行使することはできないというだけで、ビットコインを取り巻く法的関係としてなんらかの法的保護が与えられることは事実であり、例えば不法行為に基づく損害賠償請求(709条)などが考えられるようです。

判決の詳細をみてみると、裁判所は所有権の客体となる要件を①有体物②排他的支配可能性③非人格性の3つであると判示した上で、ビットコインにつき①②の要件を個別に検討しています。

①有体性につき、ビットコインはデジタル通貨でありMt.Goxの利用規約において「インターネット上のコモディティ」とされていること、「仕組みや技術はもっぱらインターネット上のネットワークを利用したものである」という事実を上げた上で「ビットコインには空間の一部を占めるものという有体性がないことは明らかである」としました。

そして②排他的支配可能性についても、

「『送付されるビットコインを表象する電磁的記録』の送付により行われるのではなく、その実現には、PoWによるr送付の当事者以外の関与が必要であり、「ビットコインの有高は、ブロックチェーン上に記録されている同アドレスと関係するビットコインの全取引を差引計算した結果算出される数量であり、当該ビットコインアドレスに、有高に相当するビットコイン自体を表象する電磁的記録は存在しない」として、ビットコインアカウントの管理者が「当該アドレスにおいて当該残量のビットコインを排他的に支配しているとは認められない」としました。

そして結論としてビットコインには有体性および排他的支配可能性のどちらも認められないとして、原告はビットコインに対する所有権を有さず、破産管財人が管理するビットコインについての共有持分権の主張、破産法78条2項13号に基づく破産裁判所の許可請求などを全て退けました

本件はあくまでも裁判例であり、最高裁による判決(「判例」)ではありませんが、現状国内では判例が存在せずビットコインの所有権を巡る判決はこの裁判例のみであることを考えれば、この判決の意義は非常に大きいものであると考えられます。

 

この事件についてより詳しく書いてあるのはこちらです。私も現在卒業論文を書くためによくこの本を参照しています。

 

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