米国ニューヨーク/NY州の仮想通貨規制について。なぜNYの規制は厳しいのか?

今回は米国のニューヨーク州における仮想通貨の規制について少し書きたいと思います。しばしば日本や中国とならび米国の規制は非常に厳格であると言われていますが、その中でも特にニューヨーク州の規制はBitlisenceと呼ばれる独自のライセンスを取得する必要があり特に厳しいものとされています。なぜこのようになっているのか以下具体的に見ていきましょう。

ニューヨーク州におけるBitlisence

さてBitlisenceというのは 一言で言ってしまえばニューヨーク州で仮想通貨交換業を営むための要件となるライセンスであるということができます。ニューヨークで仮想通貨事業を実施するためにはニューヨーク州金融サービス局(Department of Financial Services)が 実施する規制要件としてこのBitlisenceを取得する必要があります。

取得が求められる事業としては、ざっくり言うと

  • 仮想通貨の送金
  • 仮想通貨の保管や管理の維持代行
  • 仮想通貨の売買ビジネス、取引所サービス
  • 仮想通貨の発行

などがあり、規制要件の一部として、 KYC=顧客の身元確認の他に、全従業員のバックグラウンドをチェックせねばならず、取引記録は10年間の保存が義務付けられさらに企業はニューヨーク債に投資しなければなりません。また企業は仮想通貨事業によって得た収益を米ドル市場にしか投資することができません。さらに 申請に際しては30ページ以上もある膨大な書類を完成させなければなりません。

このように煩雑で厳格な規制をニューヨーク州が2015年以降実施していることで、ShapeshiftやKraken、Bitfinexと言った巨大な仮想通貨事業者がニューヨークを去り、他の場所に拠点を移すようになりました。この動きを「 Bit-exodus」 と呼称することもあります。実際に2015年以降、Bitlisenceの取得に成功した企業は2018年上半期までわずか5社しかありませんでした。

なぜニューヨークの規制は厳しい?

ではなぜこのようにニューヨークの規制は厳格なのでしょうか。

まず考えないといけない点は、ニューヨークが金融のハブであり、非常に多くの金融機関がニューヨークに拠点を置いているという事実です。

 

通常は金融機関は資金洗浄対策(AML)とテロ資金供与対策 (CFT)を実施せねばなりません。このAML/CFTの必要が特に叫ばれるようになったのは2001年の同時多発テロでした。同時多発テロのテロリストらが資金洗浄によって不法に得た金銭をあたかも通常の金銭であるかのようにロンダリングしていること、そして彼らに資金を供与してはならないという観点からです。

このAML/CTFの具体的例としてKYC(Know Your Customer)がしばしば挙げられます。このKYCとは顧客の個人を確認する作業のことであり、例えば我々が日頃銀行口座を新規作成する際に免許証を取った身分証明書を提示し銀行員の方にコピーを取ってもらう 一連の作業がこれに該当します。全ての金融機関は顧客に対するKYCの実施が義務付けられています。

同時多発テロが発生し、また大量の金融機関が拠点を置くニューヨークにおいて同様に仮想通貨においても金融商品を扱っているものとしてKYCの実施を義務付けたのがBitlisenceであると考えるとわかりやすいかもしれません。

そしてもうひとつのニューヨーク州のBitlisence制度設立の直接のきっかけとなった出来事として、シルクロード事件における仮想通貨を用いた多額の資金洗浄があります

「シルクロード」とは専用のブラウザを使用しないとアクセスできない闇Webで多額の利益を挙げていたマーケットプレイスで、シルクロードの中では人身売買、麻薬、児童ポルノ、殺人依頼、偽造パスポートといった様々な犯罪行為および違法な商品の売買が行われていました。その決済手段としてビットコインが用いられており、最終的にはFBIによってシルクロードの運営者であるウィリアム・ロス・ウルブリヒトは逮捕されたものの、ビットコインが多額の資金洗浄に用いることができると言う点、シルクロードが巨額の収益を得ていた点などから仮想通貨に対する金融的観点からの規制の必要論が高まりました。このシルクロード事件を直接のきっかけとしてニューヨークのBitlisenceが誕生したという背景があります。

シルクロード事件および闇Webについては過去に詳しく記事を書いていますので、こちらをどうぞ。

闇Webと仮想通貨

 

というわけで今回は簡単にBitlisenceについて書きました。次回以降でも仮想通貨規制については書いていきますのでぜひご覧ください。

またシルクロード事件を知る上で必要となる闇Webについてはこの本がおすすめです。

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闇Webについて知らないといけない事実は一通り書いてありますし、仮想通貨の陰の側面にも注目することで規制をより深く理解できる、ということがよくわかります。薄くて安くてすぐ読めるのでまだお読みで無い方はぜひ。