ブロックチェーンの医療分野における活用可能性について

12/5(水)、東京医科歯科大学で「医療情報×ブロックチェーンプロジェクトの実現可能性と課題」というイベントがあり私も参加してきたので、備忘録もかねて簡単に内容をシェアしておこうと思います。

内容としては、

まずJAHIS(一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会)の方々による医療システムの現状とIBMが実施しているブロックチェーンを活用した医療システムの話、次に韓国のブロックチェーンプロジェクトMediblocによるヘルスケア分野におけるブロックチェーン技術活用の話がありました。

今回は特にJAHISの小林さんが語ってくれた、IBMのブロックチェーンを活用した医療システムの話についてまとめます。(Mediblocは個人的にとても切り口が良いプロジェクトだと感じたのでまた後日書きたいと思います。)

医療システムにおけるブロックチェーン活用

 

医療システムに関しては厚生労働省がe-文書法において、電子カルテに要求される3原則を定めています。その中でも医療システムとしてもっとも代表的なものに電子カルテがありますが、厚労省の指針によれば電子カルテには「真正性、見読性、保存性」の3つが求められるそうで、小林さんによればその際に

  • 電子カルテの情報を他の施設に渡すときに電子署名(=ハッシュ関数を用いて、認証局を使って相手方に移譲)が必要
  • さらに真正性を担保するためにタイムスタンプサーバ(=ハッシュ関数と時刻情報を用いて、いつのデータなのかを担保するためのタイムスタンプを押す)が求められる

そうです。

ヘルスケアの情報を扱う上での課題

この前提を踏まえた上でヘルスケアの情報をブロックチェーンに載せるとしたときに発生するであろう課題について考えると、小林さんによれば

①ブロックチェーンのネットワークはP2Pであるため、一旦データを送ってしまうと途中で止められない。もし患者の情報を間違って送付した場合などに問題になる。

②ブロックチェーンにおけるマイナーには時間の概念がなく、彼らはあくまでもハッシュ値を計算しているにすぎません。しかしもし電子カルテならタイムスタンプを入れ、どの地点での患者の情報なのか、いつ個人が病院に行ったのかを担保しないといけません。このジレンマをどう解消するかが問題になります。

③また個人の健康についての問題は数ある情報の中でももっとも秘匿性の高い重要なデータの一つですが、その中でも特に秘匿性の高いデータを取り扱う場合にはブロックチェーンという分散された誰でも閲覧できる台帳においては細心の注意を要するでしょう。

④電子カルテは医師がカルテをかくと簡単に1Kを超えてしまい、CTスキャンなどの情報を入れてしまうと完全に1Gも超えてしまいます。このようなデータサイズが大きい台帳データの取り扱いには、ブロックチェーンは向いていないのではないかと考えられています。

このような問題があるだろう、とのことでした。おそらく話の内容からするとプライベートチェーンを前提としているように思われます。(というかヘルスケア情報ならまだしも患者の医療情報をパブリックチェーンで扱うのはかなり危険だと思われますしね)

ブロックチェーンに適している用途

では逆にブロックチェーンに適した用途はなんなのか、ということについても小林さんは一定の見解を示されていました。

例えば

①改ざん監視が主要な目的であるもの。ブロックチェーンは改ざんされた瞬間他のコンピュータによって見地されるので、このような目的には適しています。

②データサイズが小さく、相手にデータが届けばその後頻繁に再確認をする必要がないもの。ただ、この事例としては結局金融分野における送金・決済や、流通・運輸におけるサプライチェーン、公共分野における土地登記簿などが上がっており、医療分野においてはまだ活用方法は考慮の余地がありそうです。

ただ個人的には小林さんの「ブロックチェーンには『データは見られることを前提としており、見られたとしても改ざんされなければ良い』という性質があるが、医療分野においてはむしろそのデータが第三者に見られてしまうこと自体がまずいわけだから、改ざん監視を主要な目的とするのならブロックチェーンは本当に良いのか?」という指摘にもっともだなと感じました。ブロックチェーンは万能兵器ではないし、どんなことに向いていて不向きなのかは把握しておかないといけないと個人的には思っています。

IBMの国内におけるブロックチェーン活用事例

なお、IBMは国内で医療分野におけるブロックチェーン活用にすでに動き出しており、例えば調剤薬局のデッドストック解消サービス(公式HP)があるそうです。

これはブロックチェーンに情報を記録しておくことで誰がいついつ医薬品を登録、管理し、何を受領したのかと行った事実を管理できるようになるので、各薬局の在庫管理に寄与するものです。

現在はPoC段階にあり、仮想の薬局間でデッドストック医薬品の売買を行うという取引を想定したシステムを構築し、すでに検証が行われているようです。

 

今回はブロックチェーン×医療についてのイベント内容をまとめました。ブロックチェーンのイベントにしては珍しく仮想通貨業界以外の人の割合が高く、医学部生や薬学部生が多かったのが印象的でした。私も含めてついつい業界の人は業界の人同士で集まりがちですので、こういうイベントも良いなと感じました。

 

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