サイバー犯罪と米国法の域外適用

以前の記事において、Silk Road事件という仮想通貨を用いた資金洗浄が問題となった米国の事件について書きました。

www.yamato0506.info

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この事件に関連する法律上の問題について検討したいと思います。法律上の問題といってもいくつかあるのですが、その一つが米国法の域外適用です。

米国法の域外適用

本件において、米国は自国法令に基づく捜査の一環としてアイスランド政府の許可を得たうえでアイスランドのサーバも捜査していました。

このように自国法令を他国に適用する執行管轄権の域外適用にはどのような問題があるのでしょうか。

国家管轄権

そもそも国家が人や物に対して統治機能を及ぼす権限を国家管轄権とよび、

  • 人や物を起立する立法管轄権
  • それらの法令を実施する執行管轄権
  • 具体的事案について法を適用する司法管轄権に分類されます。

国際法の一般原則上、国家の執行管轄権は属地主義の
原則に基づき行使され、特別の合意がない限り、他国の領域内では行使できず、その行使範囲が非常に厳格に制限されています。これは国家の実力の行使の競合を防止し、主権侵害を回避するためにはある種当然と言えます。

ではいかなる行為が執行管轄権の行使といえるでしょうか。この点につき、サイバー空間におけるいかなる行為を執行管轄権の域外への行使とするかは議論が分かれているのですが、今回は現在サイバー空間での戦争において、既存の国際法をいかに適用するのかを最も包括的に分析した『サイバー戦に適用される国際法タリン・マニュアル』が NATO サイバー防衛センターにより刊行されているため、これに依拠し、考察していきます。

こちら中谷先生による解説が出ています、法学部生は是非。

サイバー攻撃の国際法―タリン・マニュアル2.0の解説

サイバー攻撃の国際法―タリン・マニュアル2.0の解説

タリン・マニュアル

タリン・マニュアルは既存の国際法をサイバー空間に適用することを目的としているため、既存の国際法に則り、戦時と平時における行為をまず区別しています。

まず戦時についてはタリン・マニュアルによれば有力な見解は、サイバー空間の監視活動は、物理的所在とは同義でない電子的または仮想的な所在であることから、戦時国際法上の間諜行為の場所的要件、すなわち敵国支配地域を満たさないという見解であり、これ
は米国国防総省等によっても支持されています。

一方で、戦時ではない平時の犯罪捜査で海外保管データ所在国との司法共助の手続きを取らずに、監視目的で他国システムに無断でマルウェアを設置するなど無断で遠隔入手すれば、所在国の主権侵害となるというのが有力説です。(もっとも、間諜行為が国際法上禁止されていない故に許容されるとする立場
に立てば、間諜実施国には実質的な非難可能性が存在しないため、そもそもこのような主権侵害の主張はあたらないでしょうが…)

本件のシルクロード事件は平時の犯罪捜査であるのはいうまでもないことですが、電子的侵入の形態が間諜行為の場所的要件を満たすと考える場合にしろ満たさないと考える場合にしろ、いずれの立場に立脚しても、アイスランドの許可を得た捜査であるために本件米国法の域外適用が犯罪捜査に関する違法を構成することはないといえます。

サイバー犯罪捜査における国家主権侵害の可能性

しかし、それだからと言っていかなる犯罪捜査においても必ず越境コンピュータ捜索は許容されうると考えるのは性急でしょう。

というのも米国のサイバー犯罪の 8 割は国外から行われるものですが、それは結果として外国の PC が捜索対象となりやすく、その際に現場捜査員が相手の許可なしにマルウェアを設置する等の行為によって、外国の国家主権を損ねる過度な米国法の域外適用が生じる危険性があるためです。

実際にこの点につき、2016年米国法において司法機関に関する規則を示している米国連邦刑事手続規則 41 条が改正されたことで外国での捜査に裁判所の許可が不要になり、FBI 史上最大範囲で米国法の域外適用が可能であることをかんがみると、現在過度な米国法の域外適用の危険はさらに増したものになっていると言えます。

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規制当局の仮想通貨規制に対する姿勢については、この記事で解説しているのでもしよければお読みください。この記事から来てくれた人はありがとうございます。さながらチューリング完全のごとき無限ループですね!

 

なぜ規制当局は仮想通貨を規制しなければならないのか

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