面白いと思った古典4選。古典を読めば思考はより豊かになる

古典を読む様々なメリット

今回は古典文学が大好きな自分が過去に読んで来た日本の古典文学作品の中でも最も面白いと思っている4つの作品を紹介したいと思います。

高校までの古文の授業では「係り結び」や「助動詞の活用」といった文法ばかり学習するため、あまり古文に対して面白いという印象がない人も多いかと思います。しかし現在では多くの古典は現代語訳が出版されており、気軽に手に取ることができるようになっていますし、古典を読むことで様々なメリットも得ることができます。例えば、

  • 多くの恋愛模様が描写されており、現代の恋愛に悩む人にとっては親近感を感じられる
  • 現代の歴史小説の源流となっているので、本好きの人であればより現代小説の読み方に深みがでる
  • 高校生にとっては現代語訳を読むだけでもセンター試験や大学受験での内容理解に役立つ(実際に私は大学受験時のセンター古文漢文は満点でした)
  • 古代の価値観や生活習慣などを学ぶことができるので、大学生・社会人にとっては旅行をさらに楽しむことができるようになる
  • 現代のビジネスパーソンにとって、普遍的な人間の知恵や示唆が得られるので、仕事にも役立つ

と良いことばかりです。

その中でも特に今回はメジャーな作品よりも、

少しマイナーではあるものの、内容がバラエティに富んでおりコンテンツ性が高く、古文好きの間では評価が高い作品

として、

  • 大鏡
  • とはずがたり
  • 夜の寝覚
  • 落窪物語

を紹介していきます。

歴史上の偉人の意外なエピソードを知ることができる『大鏡』

高校の授業で習ったことがある人が多いかと思われる、「大鏡」です。

代表的なシーンとして教科書などで取り上げられるのは藤原道長の全盛期(「一条天皇期」とも言います)に皇后定子と藤原道長の娘・中宮彰子が並び立つ、政局争いのシーンですが、実は大鏡にはそれ以外にも歴史上の偉人の面白いエピソードがたくさん描かれています。例えば、

定子の父・藤原道隆の容姿が非常に美しかったことについてのイケメンエピソード。彼は美男として知られていたのですが、『大鏡』の作者は道長を快く思っていなかったことから、道隆に対する評価や描写はかなり美化されており、美化の仕方が道長に対する描写と比較すると非常に面白いです。

ハイスペック貴族・藤原公任の「三船の才」。ある日藤原道長が漢詩・和歌・音楽のそれぞれについて秀でた人を船に乗せる遊びを企画したのですが、公任は全てに秀でており、全ての船に誘われ鼻高々。彼は結局和歌の船にのり、素晴らしい和歌を詠んで絶賛されるのですが、後から「漢詩の船乗っておけばよかったかも」とイキってしまうあたりがお茶目ですし、つい「現代でもこういうイキった人いるいる!」と頷いてしまいます。

などなど、歴史を大きく動かした人物や平安時代の全盛期を支えた偉人たちのエピソードダイジェストで人間味をもって描写されていて、読めば日本史で勉強した内容にグッと深みが出てくること間違いなしです。


現代語訳はこちらです。各現代語訳の後に簡潔に解説も掲載されており、一冊で平安最盛期の雰囲気を楽しむことができます。

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稀有な文体が生み出す臨場感『夜の寝覚』

「よわのねざめ」と読みます。

源氏物語成立以後の作品で、藤原定家の注釈によれば作者は『更科日記』を書いたことで知られる菅原孝標女とされていますが、菅原孝標女が書いたとされる『更科日記』や『浜松中納言物語』とは文体が大きく異なることから、菅原孝標女ではないという意見もあり、成立は謎に包まれています。

あらすじ

この作品は徹底して暗く、源氏物語に強く影響を受けたバッドエンドです。

有力家系に生まれた女主人公は、「中の君」「寝覚の上」とも呼ばれ、絶世の美女で性格も良く、将来を期待されていました。しかしある日同じように有力な家系で、中宮を妹に持つ男主人公に一目惚れされ、一晩で懐胎してしまうのですが、この男主人公、なんと寝覚の上の姉「大君」の婚約者でした。何も知らずに知り合った中の君と義兄・男主人公はこの数奇な運命に振り回され、何度も一緒になろうとしますがその度に大きな壁が立ちはだかる、正真正銘の悲恋物語です。

没入感を生む文章構成

この『夜の寝覚』は女主人公の寝覚の上や男主人公をはじめとするどの登場人物も幸せになりません。しかも男主人公の性格が非常に陰湿で嫉妬深くガチメンヘラで、寝覚の上に求婚したからという理由で当時の権力の頂点である天皇にすら腹を立てたりするほど。

それでも私がこの作品を面白いと思うのは、その文章構成が特異なものである点、そしてその文体こそが夜の寝覚の世界を奥深いものにしている点に尽きます。

というのも通常の作品は「地の文で物語が進み登場人物の会話文が付随する」形式ですが、この『夜の寝覚』に関しては地の文がほとんどなく、登場人物の会話と心情の述懐のみで物語が進みます

つまりナレーションがなく、登場人物同士の会話中での回想と個々の登場人物の思考が地の文と溶け合って、さながらミュージカルのようなのです。歌は歌、ナレーションはナレーションと分離しておらず、歌(和歌)と会話で物語が進行するので、客観性には欠けるものの非常に感情移入しやすく没入感のある作品である、これが『夜の寝覚』の最大の特色であると思います。


夜の寝覚は散逸したり欠けた部分が物語中に多いため、欠巻部分についての解説もついた解説本を読んだ方が全体像を掴むことができます。この解説本は評価が高く、おすすめです。

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日本文学史随一の過激な古典『とはずがたり』

鎌倉時代の宮廷を描いた知る人ぞ知る古典、『とはずがたり』です。

これは鎌倉という東国の武士たちに政治の実質的な主導権奪われ、退廃しきった京都の宮中において当時の上皇に仕え、自身も数奇な運命と奇異な性生活に振り回されることになった女性の自伝です。

あらすじ

筆者である自伝の主人公の女官は後深草院二条、仕えた上皇は後深草院と言います。

二条は美人で才覚もあり、明朗闊達な女性だったようです。一方で後深草院は物語を読むにつれて理解できるのですが非常に鬱屈とした陰湿な性格です(あくまでも二条のフィルターを通した描写なので、色眼鏡は大いにあると思いますが)。彼の弟であり、明るく才気もある亀山天皇と、自分にもっとも近く仕える女官である二条への強烈なコンプレックスや妬みを言動の端々から感じます。

ゆえに二条は非常にモテて様々な男性に言い寄られたりもするのですが、この院の性格と倒錯した性趣味に振り回されることになります。最終的には後深草院の妬みやフラストレーションが頂点に達し、彼女は宮中を追い出されることになってしまいます。

(このあたりかなり描写が過激で生々しいのでここでは書きません、自分で以下の本から読んでみてください。)

自立した女性としての後深草院二条

『とはずがたり』も『夜の寝覚』『源氏物語』同様、とことん主人公が追い詰められていますが、他の物語の女性たちとは異なりとはずがたりにおいては二条は恋の相手や子供といった世俗のしがらみに惑わされることなく出家の本懐を遂げます

私が二条とこの物語を好きな理由はまさにここで、身分の高い男性に完全に生活を依存せざるを得ないことが多かった当時の女性たちの中で、男性たちとの恋愛に苦しみながらも一人だけ自立し堂々とした態度を貫き通している姿は、とても格好いいです


とはずがたりの現代語訳についてはこの講談社学術文庫の訳が分かりやすくて良いと思います。当時の歴史的な背景についても解説が加えられておりおトクです。

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日本のシンデレラストーリー『落窪物語』

平安前期に成立したとされる「日本のシンデレラ物語」です。
継母にいじめられ狭い部屋の窪んだところに住まわされている「落窪の君」がイケメン貴公子に一目惚れされて連れ出され、幸せに暮らす一方で、いじめた継母は貴公子によって復讐されるという典型的な継子苛め奇譚です。

他にも『住吉物語』など、シンデレラ物語は古典文学史上存在するのですが、特に私が落窪物語をオススメしているのは

  • 敬語や回りくどい文が少なくて文章にスピード感があり、読みやすい
  • 源氏物語成立以前の作品のため、未熟ではあるものの、かえってそれが大胆で克明な描写に繋がっており、源氏物語や平安最盛期の作品よりも読みやすい
  • 主人公の落窪の君が引くレベルの貴公子による徹底したいじめっぷり

などの特徴があるからです。

とオブラートに包んで書きましたが、要は限りなく俗で下品な作品だということです。源氏物語と違って文体に微塵も教養が感じられませんし、中身もすごく面白いけど全く品がないです。

ただ、逆に長編物語で人間関係を仔細に描写する平安文学のメインストリームから『落窪物語』は堂々とそれたアウトロー感があって、読んでいて気持ちいい作品だと思います。平安文学は源氏物語をもってしばしばその頂点を迎えたとされ、それ以前の作品では『うつほ物語』を良作として語る風潮が強いのですが、これらの作品はやや冗長で、スピード感にかけるので、サクサク読めてコンテンツ性が高い点は『落窪物語』の魅力だと思います。


落窪物語の現代語訳はビギナー向け古典解説本を多く出している角川ソフィア文庫から上下巻で刊行されています。簡潔な解説と現代語訳からは荒削りで未成熟な文学を現代語訳することへの労力を感じます。良い訳で、おすすめです。

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今回は私が好きな古典を4つ紹介しました。

これらはどれもそこまでメジャーな作品ではありませんが、古典としてのコンテンツ性がありつつもサクサク読めて、知っているだけで他の人とはグッと差がつくと思うので、皆さんもぜひ読んでみてくださいね。

MEMO
紹介した古典作品はここから読むことができます。読んで知識の幅を広げよう!
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