私の人生に影響を与えた古典4選

古典はとても面白い

今回は古典オタクの自分が(過去記事参照)これまでに読んで来た日本の古典文学作品の中でも最も面白いと思っている4つの作品を紹介したいと思います。

高校までの古文の授業では係り結びとか助動詞の活用ばかり習っていてあまり古文に対して面白いという印象がない人も多いかと思うのですが、個人的にはそれはあまり古文の本質ではないと思うし、現代語訳で読めばその内容についてはすぐに理解でき、面白いと思えると思うので、もし興味が湧いたら手にとってみてくださると嬉しいです。それぞれについて私が持っている現代語訳付きの解説書のAmazonリンクを貼ってあります。

まるで銀魂実写版!『大鏡』

高校の授業で必ずならうであろう大鏡です。多分皆さんが読んだことあるのは一条天皇期に皇后定子と藤原道長の娘・中宮彰子が並び立って騒ぎになるとかその辺だと思うのですが、実は大鏡にはそれ以外にも結構面白いところが結構あります。例えば

  • 定子の父・藤原道隆のイケメンっぷりに対する描写。「病気する姿も美しい」とか贔屓が過ぎるような気がする。大鏡の作者はアンチ道長であるとの研究が有力なのですがこのあたりの描写見るだけでも絶対作者道長嫌いでしょって個人的にも言いたくなります。

  • ハイスペック貴族・藤原公任の「三船の才」。ある日藤原道長が漢詩・和歌・音楽のそれぞれについて秀でた人を船に乗せて遊ぼうとしたけどなんでも出来ちゃうハイスペな僕全部の船に誘われて選べな〜い★(意訳)とかいいつつなんだかんだ和歌の船に乗って素晴らしい和歌を詠んで絶賛されちゃうハイスペな貴族の話です。でも後に「いや〜やっぱ漢詩乗っとけばよかったかもw」とかイキっちゃうあたりが現代でもいるよなあこういう人、って感じがして親近感が湧くのは私だけ?

などなど、歴史上の人物がダイジェストで人間味をもって描写されている様はさながら有名俳優がオールスターで集まってネタ演技をしまくる銀魂の実写版にも似たものを感じます。(関係ないですが実写化銀魂2、最高でしたね。完成度たけーな、オイ)

ちなみに私が持っている現代語訳はこちらです。各現代語訳の後に簡潔な解説もあります。

大鏡 全現代語訳 (講談社学術文庫)

大鏡 全現代語訳 (講談社学術文庫)

稀有な文体が生み出す臨場感『夜の寝覚』

「よわのねざめ」と読みます。源氏物語成立以後の作品で、作者は藤原定家の注釈によれば菅原孝標女とされていますが、詳細は不明です(個人的には菅原孝標女が書いたとされる『更科日記』や『浜松中納言物語』とは文体が大きく異なることから、菅原孝標女ではないと思いますが…)

この作品は徹底して暗く、源氏物語に強く影響を受けて徹底したバッドエンドです。超有力家系に生まれた絶世の美女の女主人公(「中の君」「寝覚の上」と呼ばれます)はある日同じように有力な家系で中宮を妹に持つ絶世の美男・男主人公に一目惚れされて一晩で懐胎してしまうのですが、この男主人公、なんと寝覚の上の姉「大君」の婚約者でした。何も知らずに知り合った中の君と義兄・男主人公はこの数奇な運命に振り回され、何度も一緒になろうとしますがその度に大きな壁が立ちはだかる、正真正銘の悲恋物語です。

この夜の寝覚は女主人公の寝覚の上、男主人公をはじめ誰も幸せになってませんし、男主人公の性格がめちゃくちゃ陰湿で嫉妬深くガチメンヘラで(なんと寝覚の上に求婚したからといって天皇をすら睨みつけています、すごい執念です)読んでると4巻くらいでしんどくなってきます。それでも私がこの作品を面白いと思うのは、その文章構成が特異なものである点、そしてその文体こそが夜の寝覚の世界を奥深いものにしている点、これに尽きます。

というのも通常の作品は「地の文で物語が進み登場人物の会話文が付随する」形式ですが、この『夜の寝覚』に関しては地の文がほとんどなく、もっぱら登場人物の会話と心情の述懐のみで物語が進みます。つまりナレーションがなくて登場人物同士の会話中での回想と個々の登場人物の思考が地の文と溶け合ってさながらミュージカルのようなんですよね。歌は歌、ナレーションはナレーションと分離してなくて歌と会話で会話が進むので、客観性には欠けるものの非常に感情移入しやすく没入感のある作品である、これが『夜の寝覚』の最大の特色であると思います。

夜の寝覚は散逸したり欠けた部分が物語中に多いため、私はその部分についての詳細な研究もついた解説本でないと全体像が掴めないと思います。そのため文庫ではなく全集をお勧めします。

新編日本古典文学全集 (28) 夜の寝覚

新編日本古典文学全集 (28) 夜の寝覚

日本文学史随一の過激さ『とはずがたり』

これは鎌倉期に鎌倉という東国の武士たちに政治のイニシアチブを分捕られ、退廃しきった京都の宮中において当時の上皇に仕え、自身も数奇な運命と奇異な性生活に振り回されることになったある女官の自伝です。

この女性の名前は後深草院二条、仕えた上皇は後深草院と言います。二条は美人で才覚もあり、明朗闊達な女性でした。一方で後深草院は読めばわかりますが非常に陰湿で鬱屈とした性格で、失礼ですがどう見ても陰キャです(あくまでも二条のフィルターを通した描写なので、色眼鏡は大いにあると思いますが)。明るく才気もある弟の亀山天皇と二条への強烈なコンプレックスのようなものを言動の端々から感じます。ゆえに二条はめちゃくちゃにモテるのですが、この院の性格と倒錯した性趣味に振り回されることになります。(このあたりかなり描写がアレでドン引きする内容なのでここでは書きません。自分で読んでみましょう)

ゆえに『とはずがたり』も『夜の寝覚』『源氏物語』同様、とことん主人公が幸せになりません。でも『夜の寝覚』の寝覚の上や『源氏物語』の紫の上と違い、とはずがたりにおいては二条は(後深草院から宮中を追い出された後には)他の男性に媚びたり恋の相手や子供といった世俗のしがらみに惑わされることなく出家の本懐を遂げます。私が二条とこの物語を好きな理由はまさにここで、身分の高い男性に完全に生活を依存せざるを得ないことが多かった当時の女性たちの中で一人だけめちゃくちゃ潔いんですよね(要はめっちゃカッコいい)

とはずがたりの現代語訳についてはこの講談社学術文庫の訳が個人的には分かりやすくて好きです。まあ出家するまでが割とアレなのでどう考えても中高生の教材には使えないですね、現代ならブラウザバック推奨とかニココメで流れてくるタイプのやつです。

とはずがたり(上) (講談社学術文庫)

とはずがたり(上) (講談社学術文庫)

とはずがたり(下) (講談社学術文庫)

とはずがたり(下) (講談社学術文庫)

疾走感と爽快感がある古代のシンデレラ『落窪物語』

平安前期に成立したとされる「日本のシンデレラ物語」です。
継母にいじめられ狭い部屋の窪んだところに住まわされている「落窪の君」がイケメン貴公子に一目惚れされて連れ出され、幸せに暮らす一方で、いじめた継母は貴公子によって復讐されるという典型的な継子苛め奇譚ですが、私が落窪物語をすごく好きなのは

  • 敬語や回りくどい文が少なくて文章にスピード感があり、読みやすい
  • 源氏物語成立以前の未熟ながら大胆で克明な描写

  • 貴公子による徹底したいじめっぷり(本当に徹底的にいじめ倒していて主人公の落窪の君が半分引いていたりする)

といった特徴があるからです。平安文学は源氏物語をもってしばしばその頂点を迎えたとされ、それ以前の作品ではうつほ物語を良作として語る風潮が強いですが、個人的にはそのような長編物語で人間関係を仔細に描写する平安文学のメインストリームから堂々と大きくそれたアウトロー感がすごく読んでて気持ちいい作品だと思います。

とオブラートに包んで書きましたが要は限りなく俗で下品な作品なんですよこの作品。源氏物語と違って文体に教養のカケラも感じられないし中身もすごく面白いけど全く品がないです(「未熟・大胆・克明な描写」とか偉そうに書きましたが要はやたら生々しいってことです)

落窪物語の現代語訳はビギナー向け古典解説本を多く出している角川ソフィア文庫から上下巻で刊行されています。簡潔な解説と現代語訳からは荒削りで未成熟な文学を現代語訳することへの労力を感じます。

落窪物語〈上〉 (角川ソフィア文庫)

落窪物語〈上〉 (角川ソフィア文庫)

落窪物語〈下〉 (角川ソフィア文庫)

落窪物語〈下〉 (角川ソフィア文庫)

ちなみに落窪はあくまでも部屋の落ちくぼんだ場所のことですからね!決して他の意味なんてないですよ!別に古語のスラングだったりしないですからね!ネットには出てこないからって決して本で調べちゃダメですよ!絶対ダメだよ!

という訳で今回は私が好きな古典を4つ紹介しました。それぞれについてまた個別に記事は書きたいと思うので、暇な人や興味を持ってくれた人はまた読んでくれると嬉しいです。

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