ブロックチェーンを巡る中国とアメリカの特許戦争

今回はブロックチェーン関連の特許について、以前調べた内容を公開したいと思います。
かなり法学部向きの話にはなりますが、あまり特許法や知的財産法全般に踏み込んだ話はしていないので、現在の特許の現状はこうなってるんだな〜という感じで読み進めてもらえればと思います。

ブロックチェーン関連特許の現状

特許取得数は中国と米国が圧倒的

ブロックチェーンを活用したテクノロジーの特許の現状はどうなっているのでしょうか。

中国の知的所有権ニュース専門サイト IPRdaily とイノベーション調査センター incoPat(合享智慧)の報告(中国語です)によれば、
中国とアメリカが特許数で圧倒的にリードしており、ある種の特許戦争の様相を呈しているようです。具体的にはブロックチェーン技術で公開された特許の数で上位100位のうち、実に49社が中国の企業であり、中国がアリババや中国人民銀行を筆頭に、特許取得数世界一の国として世界をリードしているといえます。次いで多いのがアメリカで、バンク・オブ・アメリカを中心に23社がランクインしています。この2国以外に複数社がランクインしたのはイギリスの2社と日本の5社のみであることからも、中国とアメリカが突出していることがわかりますね。

R3

日本でも有名なのは実際にアメリカ合衆国に本拠を置くブロックチェーンスタートアップとして有名なR3でしょう。R3は銀行に利用されているブロックチェーン技術についての特許を早くから取得しており、日本のメガバンクを含めたコンソーシアムを締結しています。詳しくはこちらのサイトをどうぞ。

jp.wsj.com

コンソーシアム型ブロックチェーンの雄ですね。コンソーシアム型をブロックチェーンではないと思っている人(パブリックブロックチェーンだけが狭義のブロックチェーンであると考える人)もいるとは思うのですが、まあ分散型技術に関しての特許は現状コンソーシアム型がかなり大部分を占めているんですよね…

特許戦争とイノベーション

オープンソースと特許の矛盾

しかしいまだ未成熟なブロックチェーン技術に対する知的財産戦略があまりにも過熱することは、技術の発展をむしろ阻害する危険性があると個人的には思っています。そうなると特許の目的(特許法1条「「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の
発達に寄与すること」)も叶えられなくなってしまうかもしれず、まさに特許のジレンマだと言えます。

というのも、パブリックブロックチェーンは本来オープンソースです。オープンソースとはソフトウェアの設計図に当たるソースコードを無償で公開して誰でも自由にそのソフトウェアを改良して、再配布できるようにすることですが、ブロックチェーンはこのオープンソースに支えられてきたからこそ多くの人々が開発に携わることができ、このような非常に速いスピードでの開発が可能になってきた側面があります。

ゆえに独占的な権利を得ることを本旨とする特許の過熱はこれと相反することになります

コンソーシアム型も同様です。オープンソースのコンソーシアム型ブロックチェーンについては、特許を誰が申請するかが問題となるでしょう。

ゴールドマン・サックスによる大量特許申請

 より具体的にこの問題についての事例を2点、検討したいと思います。まず巨大企業による大量の特許申請の代表例として挙げられるものには、例えばゴールドマン・サックスによるブロックチェーンを用いた金融決済システムがあります。これは銀行のブロックチェーン上で行われたトランザクションは誰でも閲覧できる以上、プライバシーの面で重大な欠点があり、また反対取引により外国為替取引の競争力が低下したり、資金洗浄対策の不備(仮想通貨は資金洗浄に容易に用いられてしまいます。過去記事をご覧ください)などが批判点としてあげられてきました。

ゴールドマン・サックスとしては、このブロックチェーンは必要に応じてのみ公開を可能とするプライベートトランザクションである点を考慮し(すなわちプライベート型ブロックチェーンであったということです)、プライバシー、セキュリティ、および規制ガイドラインへの準拠を提供する他のテクノロジーと、高速性と効率性を備えたブロックチェーンテクノロジのメリットの統合を試みたものであると主張し、実際にこの点が米国特許取得の際の決め手となりました。

すなわちプライベート型ブロックチェーンである点が考慮された特許の取得であったため一件落着となったわけですが、もしこれがパブリックブロックチェーンだった場合どうしたんでしょうね…

クレイグ・ライト氏による「特許帝国」構想

サトシ・ナカモトを自称するオーストラリアのクレイグ・ライト氏は大量の特許取得により「特許帝国」を築き上げようとしていました。ライト氏が適用した特許は、オンラインコンテンツを安全に支払うための仕組みから、ブロックチェーン上で「物のインターネット」を運営するためのオペレーティングシステムまでさまざまで、合計数十にもわたる申請量でした。

このような大量でなおかつクリティカルな技術の特許の申請については、例えば著名なブロックチェーンに関する著作Blockchain Revolutionの共同執筆者であるDon Tapscottも特許訴訟の急増がこの技術の発展に壊滅的な影響を与える可能性を示唆しています。

ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか

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彼は「この種の行動は、新しいデジタル時代の中心である技術革新、コラボレーション、オープン性とは対照的であり、…新しいパラダイムに脅かされた既存の人たちが、自分の利益にさえも及ばない行動に戻ってしまうのは残念だ」と述べています。このように創造性を妨げる危険が多分にあるわけですね。

このような特許の現状について私個人の考えは別記事で書いたので、もしよければそちらもどうぞ。完全に法学部向けの記事になってしまいますが…

www.yamato0506.info

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